相手の人のことを知ること,相手の言葉を受け取ること,相手の気持ちを握りしめること。リアルでは面倒で,避け続けていたそれらに,純粋に面と向かう,ネットワークとは。
全米科学財団から「人間の能力向上のための学際領域技術:ナノテクノロジー,バイオテクノロジー,情報技術,認知科学」と題した報告書が発表された。人々が脳をつなぐ地球規模の集合知性,寿命100歳を超える人類,人格をネットワークにアップロードするコンピューターなど,未来への大胆な予測が多く,実現可能か? 有用か有害か? などの意見が出ている。
夢物語のようなことが新しい発見や科学的な進歩によって実現可能になるか,というように述べられているが,ことネットワークに限ってはそうではない。ネットワークとは,この10数年で生まれ,今後も新しい技術を取り入れていくものではなく,太古から存在していた。それがただ,具現化されただけだ。
メールやIMのやり取りがなくても,人間は意志のやりとりを行っていた。気持ちは伝わり,意志は相手に明確になる。そのみえなかった糸が,今はネットワークと呼ばれている。ただ,それだけだ。人間の知は無意識のレベルで集合していたが,目にみえて,検索可能なデータブロックとして現在手を伸ばすことができる。そのなかで,人間本来の姿に郷愁を感じることもあるだろう。忘れていた,相手の意識との接し方,結びつき方。あぁ,なんて懐かしいんだろう。人とは,もともとこんなものだったのか,と。
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